新株予約権(ストックオプション)とは

ストックオプションとは

ストックオプションとは、役員、従業員や社外取締役などの協力者に対し、自社株式を前もって定められた価格で取得できる権利を付与する制度です。労働の対価として与えられるコール・オプションです。

 コール・オプションとは「一定の金額の支払いにより、原資産である自社の株式を取得する権利」のことをいいます。キャピタルゲインによってインセンティブを高める効果がるので、ストックオプションの導入はベンチャー企業やI P O(新規上場)のように、将来的に高い成長の見込みがあり、株価の向上が期待される企業の多くが活用しています。

なぜストック・オプションを発行するのか

ストックオプションを発行する大きな目的は権利を付与された者に対するインセンティブです。企業の業績が上がれば付与者はキャピタルゲインを期待できるので、このようなインセンティブを使って会社の業績をあげようというモチベーションにつなげていくという仕組みです。

またストックオプションは優秀な人材の確保にもつながります。ストックオプションを与えられた者は、将来のインセンティブに期待し、会社の業績をあげてキャピタルゲインを得ようとモチベーションが高まることにより、その会社への定着につながり優秀な人材の確保が可能となるのです。

ストック・オプションの公正価値とは

公正価値とは、その時の価格を意味します。当初は、ストックオプションの行使価格と株価の比較のみで公正価値評価は示されていませんでした。しかし、平成17年12月27日に「ストック・オプション等に関する会計基準」及び「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」が公表され、ストック・オプションが費用計上されるようになりました。

 そのため現在では、ストック・オプションの公正価値を算出する必要があります。評価方法には、ブラック・ショールズ・モデル、モンテカルロ・シミュレーションモデル、二項モデルがあります。勤務条件や業績条件といった権利確定条件やその他の条件のついていないシンプルなストック・オプションであれば、ブラック・ショールズ式や二項モデルのみで公正な価格を算出することができます。しかし、このような条件がついた複雑なストックオプションの場合は、勤務条件や業績条件といった権利確定条件をモンテカルロ・シミュレーションに組み込んで公正な価格を算出しなければなりません。こうした手法を使いこなすには、専門的な知識を要します。

ストック・オプションの公正価値は「公正な評価単価+ストック・オプション数」なので、まずは公正価値とストック・オプション数を算出しなければなりません。公正価値を算出するためには、オプションに共通な前提条件を設定し、これらの条件を確定してブラック・ショールズ式等で公正単価を算出します。ブラック・ショールズ式によってコール・オプションの価格を算出するための6つの条件は以下の通りです。

①オプションの行使価格
②オプションの満期までの期間
③算定時点における株価
④株価変動性(ボラティリティ)
⑤配当
⑥無リスクの利子率

中でも最も重要な条件とされるのは、平均値からのばらつきの度合いを示す指標である④株価変動性(ボラティリティ)です。なぜなら、この株価変動性が大きい株価ほどストック・オプション価値は高くなるからです。しかし、この指標のテクニカル分析においては、恣意性を完全に排除することは難しく、慎重に計算する必要があります。こちらの適用指針は以下の通りです。

①株価情報を収集する期間 
②価格観察の頻度 
③異常情報等の要因を考慮すること

ストック・オプション数については、権利確定条件によって失効するので、失効の見込み数を控除する必要があり、モンテカルロ・シミュレーションを用いて株価の推移のシミュレーションを行わなければなりません。このような手法で失効の見込み数を算出し、公正価格の算出に利用します。

上場企業・未上場企業との違い

未上場企業のストック・オプション評価は、本源的価値のみの評価で足ります。なぜなら、ストック・オプションの公正価値は本源的価値と時間的価値から成り立っているおり、上場企業でなければ時間的価値の評価は不要だからです。本源的価値とは、「評価時点の株価 -行使価格」を示します。時間的価値とは、権利行使までに株価の動きによってオプションの評価が高まる機会をしまします。したがって、未上場企業の場合は行使価格を評価時点の株価と同じかそれ以上に設計すれば費用0でストック・オプションを発行することが可能であり、大きなベネフィットとなります。